海月漂流記

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映画『愛に乱暴』

森ガキ侑大監督『愛に乱暴』を見た。

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原作との大きな違いとして、

・義父が既に他界している

・母屋と離れの歴史について触れられない

・床下に隠されていたものが変更されている

・日記がTwitterに変更されている

がある。登場人物が絞られたのでスッキリしたのと、初瀬桃子(江口のりこ)が床下を掘る理由が変わるので原作とは少し違う印象が残る。

 

初瀬真守(小泉孝太郎)がクズ旦那すぎる。そもそも不倫で桃子と結婚して、義実家とほぼ同居状態なのに、三宅奈央(馬場ふみか)とも不倫をして、ホテルのカフェで桃子に会わせるその全てがグロテスク。どうせまた不倫するやろこいつ。

 

奈央のもとに家の庭でとれたスイカを持って単身乗り込むところがザ・修羅場だった。奈央の怯えようもわかる。かわいそう。帰る際聞こえた大きな音。連想される最悪の事態。

自分がかつて真守との子供を流産してしまったことを思い出し、走って助けようとするところにも、桃子の人柄というか、「同じ女性としてそうせざるを得ない」というものを見た。

 

監督コメントによれば「今映画化することに意味がある」とあるけど、ただ江口のりこが笑いながらチェーンソーを振り回しているところを撮りたいだけじゃないかと思った。インパクトがあるし。床下に赤ちゃん用の服があったのは何故だろう。もし桃子が流産をきっかけに埋めたのなら、どうやって埋めたんだろう。

何があるのかわからなくて床下に潜るのと、自分が隠したものを掘り起こすために床下に潜るのは全然違うけど…。

 

義母(風吹ジュン)からの微量なストレスを適当にかわし、食事を作り、真守が洗面所をヒゲだらけにして放置するのを水で流し、石鹸教室の講師をして、不自然に整ったキャリーケース(おそらく不倫旅行)の洗濯物を出して、ゴミ捨て場の掃除をして…。

当たり前とか日常と呼ばれるものかもしれないけれど、ストレスなことには違いない。そしてそのストレスに寄り添ってくれる人が存在しない、それが桃子にとって一番の不幸なのだ。

 

周りがあまりにも好き勝手振る舞うから、桃子は狂人のふりをした。それを義母や真守は狂人そのもののように思っている。それは桃子への理解が足りない、そもそも理解しようという気がないから。誰かに見てもらえている、認められている、そういう感覚が全くないからこそ、思いがけない人からの「ありがとう」が、桃子にとって宝物なのだと思った。

 

母屋でアイスを食べながら離れの取り壊しを見守る桃子の開放感がよかった。