海月漂流記

映画や本の感想、日記など。

漫画『おとなになっても』

志村貴子『おとなになっても』を読んだ。

kisscomic.com

絵は可愛いいし柔らかいタッチなのに、中身はしっかり不倫漫画。「大人百合」と紹介されているようだし、確かに女性同士の恋愛なんだけど、良い意味で普通の人間ドラマだなと思った。

LGBTQを扱った作品は、「純愛」とか「悲恋」とか出てきがちだけど、そんなことはなくて、それが好感をもてた。そして、全ての登場人物に少しずつ欠点がある。読んでてみんなをちょっとずつ嫌いになった。

 

綾乃は結婚しているのに朱里を好きになってしまって、その持て余した感情を本人もどうすれば良いのかわからない。朱里は連絡先消さなきゃ、とか思ってはいるけど、綾乃が意外とグイグイくるから思いを断ち切ることはできない。

綾乃みたいな「周りに対して正直でいることが誠実」という考えって、周りを振り回して本人スッキリ、ですごく勝手な立ち回りだよな、と感じた。流石に旦那もかわいそう。作中でも旦那から「身勝手な女」と思われている。それに、旦那からしたらこの不倫は、相手が女性でどう思えばいいのかわからない、と混乱が強い。

 

読んでて辛かったところは、ファミレスでの話し合いを綾乃の勤めている小学校の保護者に聞かれてしまうところ。それを他の保護者に広められたり、子供にバラされたり、保護者会で糾弾されたり…。

もちろん不貞行為に嫌悪感を持つ人は多いだろうし、近所のファミレスで話し合っていた綾乃たちが悪いけど、なんで教員がプライベートのことを他人に言わなきゃいけないのか、とかわいそうだった。異動が認められて良かった。

 

色々な出来事はあるものの、ゆったりと時間が流れ、綾乃と朱里の同居生活が軌道に乗ったあたりで最終回を迎えた。「その後」を書かず、今後どうなるかわからない、不透明なまま終わったのが潔いと思った。

未来のことは誰もわからない。いくら歳を重ねても、「おとなになっても」、自分を誤魔化したり取り繕ったりしながら、そうやって日々を過ごしていくのだと思った。